死神少女 平和と手

「平和…ですか
「それがいったいどうしたというのです
「今の世の中…
「ずいぶん平和になったと思いますね
「嘘?
「どうして嘘をつくのです?
「嗚呼、

「平和ボケしていらっしゃる

「それは日本だけの話?
「そうですね
「国外へ出れば物騒でしょうね
「勿論、国によるのですが

「私の名前?
「幸夜です

「幸せな夜、ですよ

「ありがとうございます
「名前を褒められるのは嬉しいものですね

「歳は7歳です
「小さな、何の害もない女の子ですよ

「ところで、どうして突然、
「平和についてお話をしたのですか?

「手?」
「手を、差し伸べる…

「それは良い事ですね
「頑張ってください
「けれど、
「この箱は何か関係が?
「お金を…入れるのですか
「募金箱

「知っていますか?
「戦争というのは資源争いでも起こるのですよ
「資源…お金になるものです

「お金で始まった戦争による貧困を…
「お金で解決する

「皮肉なものですね

「最も、貧困の中にいる人たちは
「何が貧困を巻き起こし、
「何が飢えを凌がせているのかについてなんて、
「誰も言いはしないでしょう
「分かり切っている…

「お金

「それさえあれば食事ができる
「それさえあれば衣服も買える
「それさえあれば家屋も作る事が出来る…

「戦争で貧困の中にいる人に愛の手を

「皮肉なキャッチコピーだと思いませんか?
「文句をつけているわけではないですよ

「私にはこれしかないのですが…
「百円です
「どうぞ、私の愛の手です

「おばさんはどうして、この活動をしているのですか?
「…この戦争に旦那さまが巻き込まれたと
「命は…
「そうですか
「残していく人は少ない方が良いですね

「おばさん、家族は?
「いないのですか
「それで、活動にのめり込んでいるのですか
「大丈夫ですよ

「いえいえ、
「もうじきお迎えが来るの?なんて、
「そんなことはありません

「もう来ています

「楽しそうに笑いますね
「本当に分かっていても可笑しいですか?

「私が死神でも

「こんな大人びた7歳児はいないのですか?
「おや、それでは私が…
「人ではないと分かってらっしゃった?

「そうですか
「ずっとお迎えを待っていたのですか

「あちらで旦那さまと再会できると良いですね
「優しい?
「私は優しい、ですか
「いえ、怨む心も溶けたのでしょうか

「さあ、逝きましょう