電撃と少女

 神様とやらは僕が嫌いなのだろうか。
 僕がどうやっても手に入らないものを、
 僕に求めさせる。

 僕に走った電撃。
 一枚の絵が、
 その中で微笑む少女が、
 僕はとても欲しくなったんだ。


 街を歩いていると少女に出会った。
 あの絵には似ても似つかない、
 なのに僕を惹きつける、
 大嫌いな少女。

「私はあなたが嫌いだと言いましたよね」
「僕も君が大嫌いだ」

 けれど、不思議と離れがたかった。
 言い争いながら、
 時には引っかかれ、殴りかかりながら、
 僕らは距離を近づけて行った。


 時が流れて行って、
 僕は男になり、少女は女になった。

「私は貴方と結婚しようと思います」
「僕も君と結婚しようと思う」

 関係性は変わらなかった。
 互いを嫌いだと
 平然と言い放つ夫婦は奇異だろう。

 それでも僕は満足していた。

 相手の嫌いなところはどこであろうと言った。
 相手にも言われた。

 こんな関係が欲しかった。
 自分を一切、隠さなくて良い相手。
 自分を一切、隠さないでいてくれる相手。


 そんな僕らに子供が生まれた。
 女の子。
 可愛いと思った。
 愛しいと思った。

 初めての感情ではなかった。


 娘は言葉を次々覚えていった。
「パパ」「ママ」「きらい」「すき」

 僕たちの事、僕たちの言葉。


 誰も、僕らを仲の悪い夫婦とは思ったりしない。
 思ったときに言う、好きだ、愛してる、可愛い。
 嫌いより余程多くこの言葉を使うから。


 神様は僕を嫌ってはいなかったようだ。
 あの絵がどうなったかは知らない。

 それよりも愛しい、妻と娘がここにいる。
 僕は十分に満足している。

 そう、人は僕を幸せ者と呼ぶ。
 大当たりだ。