遺された闇

 神は言ったらしい。

 

 光あれ

 と。

 

 当たり前のように、

 最初から其処にいた私には小さく微笑んだ。

 

 あの、優しい神の事は忘れない。

 忌まれるべきはずの私のために、

 たくさんの場所をくれた。

 

 神は色々なものを生み出した。

 

 太陽、月、星、

 海、大地、森、草原。

 

 ひとり、アダムという男が生まれ、

 そのあばら骨からイヴが生まれたという。

 

 神は幸せそうに人間を見ていた。

 

 アダムとイヴが楽園を追われ、

 カインとアベルが殺し、殺されても、

 人類を信じ続けた。

 

 ある日、神は命の灯火を消した。

 

 誰も気がつかなかった。

 私だけが亡骸もない、神の死を哀しんだ。

 

 私は夜、

 私は黒、

 私は闇…。

 

 私の涙が世界を覆い尽くし、

 と或る星では大雨が降り注ぎ、

 太陽の光すら遮る病みが来た時、

 世界のカウントダウンが終わった。

 

 光あれ

 

 私は囁いた。

 これは冒涜かもしれない。

 神が作り出したものの改変なのかもしれない。

 

 けれど、

 神と呼ばれたひとりの何かの作り出した、

 

 世界…が、

 私は好きだった。

 

 人々は変わらず殺しあう。

 災害に無力に死んでいく。

 

 それでも時折、見せる強い輝きが…好きだった。

 原初の光のようで。

 

 

 本物の神を亡くした事にも気がつかない世界は、

 かつて、闇と呼ばれ、神の親しい友だった、

 新しい神を受け入れた。