夜の牢獄

 夜を地獄のようだと思ったものにしか、

 俺の気持ちは分からない…。

 

 

 朝…か…。

 明るい日差しのうっすらと入る、

 暖かい部屋で思う。

 

 また、起きてしまった。

 

 そして、自分の思考に疑問を抱く。

 死にたいのか、俺は…?

 

 重い身体を引きずり、

 精神障害者のひとり暮らしに必要な事をこなす。

 

 大して苦労する事はない。

 生きているほどに苦労する事は何もない。

 昼間は。

 

 料理を作り、

 保存できるものやアレンジできるものはないかと、

 比較的、はっきりした頭で考える。

 

 料理は好きだ。

 味見して、美味しいと思うと達成感もある。

 俺はあまり味見はしないが、

 酷い失敗はした事がない。

 

 洗いものをして、洗濯をして、

 漫画を読んで、動画を見て、一日が終わらない。

 

 俺は終わらせたい。

 夜は睡眠を取りたいと思う。

 当たり前の欲求と、眠れない苛立ち。

 

 夜はまるで牢獄のようだ。

 地獄はこういうところだろうな、と、

 睡眠薬でぼんやりした頭で思う。

 

 俺の飲んでいる眠れるはずの薬、実に8錠。

 これで、主治医を疑わないのは、

 俺の病名のせいだ。

 

 誰かのせいに出来たら、楽だったのに。

 

 統合失調症とPTSD

 …どちらも症状に眠れないことが挙げられる。

 

 統合失調症は不眠。

 寝つきが悪い、中途覚醒、早朝覚醒の3つ。

 

 PTSDは過覚醒。

 とにかく眠れない。

 

 俺は一度眠ればそう簡単には目覚めない。

 10時間は寝る。

 だから、寝つきが悪くて、とにかく眠れない、

 と、いう症状が主に出ているわけだ。

 

 睡眠薬を9時に飲み、

 追加の睡眠薬を10時に飲み、

 更に、追加の睡眠薬を11時に飲み。

 3時間、足掻きに足掻いて、2時に寝る。

 

 これでも、マシにはなったのだ。

 

 一晩、眠れず、昼頃に眠り、夕方に目覚める…。

 そんな生活は、入院で緩和された。

 

 しかし、病院で眠れなくても平気だったのは、

 自分の家ではなかったから、らしい。

 

「ッ!」

 

 危なかった。

 絨毯を血塗れにするところだった。

 溢れる血液を堰き止めるティッシュペーパーに、

 ぼう、っとした。

 

 久しぶりにやってしまった。

 

 子供の頃から、自傷行為は行っていたが、

 年々、酷くなっている気がする。

 

 夜の牢獄での楽しみは少ない。

 テレビは好きではないし、

 漫画を読むのも頭を使うので疲れる。

 

 自傷は俺の嗜好だが、

 切る事はあまり好きではない。

 

 自分を殴りつけて痣を作るのが、

 俺の嗜好する、自傷行為だ。

 ただ、

 それすら面倒だし、即効性が欲しいときは、切る。

 

 剃刀を片手に、身体を切りつける。

 目立たない脚部が良い。

 切りすぎて、

 痛みで眠る事が困難になった事があるのだが、

 今回は大丈夫そうだ。

 

 2本の切り傷。

 20本以上というのはどうかしていた。

 

 俺はふわりと眠くなった。

 意識が急激に落ちて行く…。

 

 

 朝…か…。

 明るい日差しのうっすらと入る、

 暖かい部屋で思う。

 

 また、起きてしまった。