レディ・ローズ

 私がレディ・ローズと呼ばれ始めた

 きっかけはもはや不明だ。

 

 薔薇のように美しく、

 薔薇のように棘を振るい、

 

 枯れるときを感じさせなかったから。

 

 恐らくは、

 そういうことだ。

 

 

 

「踊りましょう?」

 

 今宵も私は踊る。

 皮の手袋を外した手に輝くナイフ。

 物陰の雑談。

 死へのカウントダウン。

 

 

 誰より、私が縛られているのはひとりの青年。

 彼のためなら、私は使い捨ての駒にだってなれる。

 

 

 ナイフで首筋を切りつけ、

 美しく咲いた薔薇を前に彼が…愛しい人が、

 銃を構えて笑っていた。

 

 銃声銃声銃声

 

 

 身体が薔薇の色に染まった、

 私はレディ・ローズ。

 

 手を離してはいなかった。

 ナイフ…切りつけた。

 

「この…」

「踊りましょう?」

 

 あの世で、たったふたりで。

 私の誰よりも殺したかった薔薇の似合う青年に、

 何度もナイフで切りつけた。

 

 

 致命傷も与えられないなんて、未熟な人。

 …可愛い人。

 

 

 苦悶の声は美しい音楽。

 私は酔った。

 聞きたかった。

 ずっと、求め続けていた。

 

 生温かい彼の薔薇もいつか黒く変わるのだ。

 その前に。

 

「愛しているわ」

 

 絶命した彼の身体の上で、

 深く…

 

 深く胸を刺し貫いた。

 

 

 斯くして、私は伝説の薔薇になった。

 人々は嫌悪と恐怖を隠して笑うのだ。

 

 レディ・ローズも人だった、と。

 

 

 うふふ