漆黒の旅団

 髑髏のタトゥーの団長は、毎日毎日、笛を吹く。

 

 

「もう限界だ。食うものもない。…子供を」

「そうだね。下の子が良い。賢いから気をつけな」

 

 両親の会話は聞こえていた。

 この狭い小屋で、

 囁くような会話に僕は、耳を塞いだ。

 

「坊、散策に行こう。普段、遊んでやれないからな」

「うん」

 

「ここで待ってろ、水を探してくる」

「うん」

 

 これで、おとうは、戻ってこない。

 僕は、ついて行ったりしない。

 この、想いが、あの家庭とも呼べない家を、

 焼き尽くしてしまえばいいのに。

 

「さあ、旅に出ようではないか!」

「!?」

「私は漆黒の旅団の団長。

 それ以上でもそれ以下でもない。

 君に、復讐心というものがあるのなら、

 

 さあ、旅に出ようではないか!」

 

 

 そして、僕は、旅に出た。

 

 

 今日も団長は笛を吹く。

 

 腕の3本ある少女が、話しかけてくる。

「私は今日から旅に出るの。サーカスの見世物だった」

「君は今日から、復讐の旅人さ」

「貴方の復讐は終わったの?」

「まだまださ」

 

 僕は18歳になっていた。

 団長の言う、復讐の意味を理解していた。

 

 とある、街で火種を撒く。

「隣国が軍備を増強しているのは、何故だろうね?」

 

 とある、街で火種を撒く。

「あの街は、隣国の軍備に興味があるんだってさ」

 

 隣国へ旅し、火種を撒く。

「あの国では急に軍備を増強しだしたよ」

「この国の軍備を探っているって噂さ」

 

 撒き散らされた火種に、燐寸を一本。

「戦争が始まるんだってさ」

 

 

 始まった戦争。僕の復讐。

 あの村は国境の真ん中だ。間違いなく、助からない。

 

 

 団長は言う。

「君の復讐を見届けに行こうか!」

 

 僕のかつて暮らした家の位置には、

 黒焦げの死体がひとつ、ふたつ…よっつ。

 父親、母親、姉、兄。

 

「はは…あははははは」

「これからも、旅を続けるかい?」

「勿論」

 

「君のサーカスにはどんな復讐が似合う?」

 腕の3本ある少女は笑う。

「サーカスだけじゃあないわ。私を笑った観客たち、

 みんな、みんな、死ねばいいのよ」

「君の復讐を手伝おう」

 

 

 髑髏のタトゥーの団長は、毎日毎日、笛を吹く。

 漆黒の旅団は破壊の旅路をただ、進む。

 

 

「さあ、復讐の旅に出ようではないか!」