青いスリッパ

 青いスリッパが5組、枕元に置いてあった。

 

 待て、何がしたいんだ、世界よ!

 

 天を仰ぎ、

 ついでに窓辺に寄って、後悔した。

 

 しんしんと雪が降っていた。

 

 説明しよう。

 今は4月だ。

 桜も散って、桜の花びら…かなあとか、

 思う余地すら残されていない。

 

 しかも、

 ひとり暮らしの私の部屋の寝室に置いていかれた…、

 

 スリッパ。

 

 それも5組。

 5組…ひとり暮らしなのに…。

 

 冬に使っていたスリッパは暖かいが、よれよれで、

 しかも、もう暑くて履けたものではなかった。

 

 しかし、話を少し戻すと雪が降っていなかったか?

 ぽかぽか陽気とお天気お姉さんが、

 今日の天気を予想していたし、事実、暖かい。

 

 しかし、外は雪だ。

 窓を開けた。

 

「寒ッ!?」

 

 冷気が一気に入ってくる。

 慌てて、窓を閉めると、テレビをつけた。

 

 この異常気象で大騒ぎだろう。

 と、思ったのだが…、いつも通りだった。

 

 天気予報が始まる。

 私はこの異常について説明をしてくれるだろうと、

 お天気お姉さんを真剣に見つめた。

 

『今日は、暖かいですね~』

 ぶち

 

 電源を切った。

 ローカル番組なので実は沖縄でしたという、

 オチも期待できない。

 

 要するに異常事態なのだ。

 私だけが。

 

 5速組のスリッパは春物だった。

 ふわふわも、もこもこも、ない。

 

 組み合わせて、一体化してあったスリッパを解く。

 ばらばらと撒き散らされる10個のスリッパ。

 

 ふたつ選び、履いてみた。

 履き心地は悪くない。

 

「ありがとう、サンタさん」

 

 そういうことにしてみた。

 私の年齢とか、季節とかは無視だ。

 

 外を見ると、大雪だった。

 ベランダが恐ろしいことになりそうだ。

 焦燥に駆られながら、キッチンのカーテンを開く。

 

「………」

 

 外はぽかぽか陽気、にしか見えなかった。

 鍵を開けてベランダに出る。

 

 暖かい。

 

 なんだ、そうか。

 白昼夢を見たんだ。起きたばかりなのに。

 

 寝室に戻り、閉めてしまっていたカーテンを開けた。

 外は大雪だった。

 

 私は無言でひとつ、スリッパを拾い上げた。

 窓に向かって、

 

「死ね」

 

 投擲した。

 

 ぐわっしゃああああん

 

 冷気が入ってくる。 

 窓が割れたか?

 そんなわけはあるまい、と黙って立っていると、

 

 視界が青く染まった…。

 

 ようやく、目を開けられるようになると、

 閉まった窓と1足のスリッパが見えた。

 窓の外はスリッパと同じ青色だった。

 

 良い、天気だ。

 

「まったく時間の無駄だった」

 

 私は4組のスリッパを玄関に片づけ、

 1組を使って日常に戻った。