ドライビングテク~弟~

 私は免許を持っていない。

 不便だが、教習所で落ちこぼれた以上、仕方がない。

 もう、それは10年も前の話だが。

 

 雪が降った。

 買い物と病院だあ、頑張るぞお!

 

 休日にある用事なんて、そんなものだ。

 

 寒いだろうなあ。

 バスのなかはあったかいぞ。

 

 ひとりごとで自らを鼓舞していると、

 3歳下の弟が、

 

 姉貴、送って行こうか?

 

 と、訊く。

 

 私は大喜びで、頼む!と言った。

 寒くてつらかったのだ。

 

 28歳になった弟が、天使に見えても、

 別におかしくあるまい?あるまい?

 

 子供っぽいところの残った私とは、

 対照的な、

 すっかり大人になった弟。

 

 まずは病院?

 弟が尋ね、

 そうそう。

 私が答えながら、弟の車に乗る。

 

 銀色の軽自動車。

 私には車種も分からないが、

 結構、格好良いのを選んだな、と思う。

 

 弟はペットボトルに入れてきた水を、

 とぽとぽと車にかけ、

 凍結を解除し、

 エンジンをつけて、

 車内を暖めた。

 

 いく。

 弟の言葉と同時に車が動き出す。

 安全運転で行ってね。

 無論。

 

 病院に着くと、

 ここで待ってるから、と、

 弟は車内に残った。

 

 診察が終わり、薬局で薬をもらい、

 車に戻ると、

 

 買い物行こうか?

 行こう行こう。

 

 弟の車は驚くほど揺れない。

 

 明日は路面が凍結するな。

 弟が言う。

 

 車が、がががががって滑るよね。

 私が言う。

 

 チェーン、つければいいんだよ。

 

 へえ?

 

 食材を買い込む。

 当然のように弟は車で待っている。

 お米も買って、

 車に近寄っていくと、

 弟が荷物を受け取って、積み込む。

 

 帰ろう。

 

 うん。

 

 家に向かう入り組んだ道のり。

 弟は車庫入れの時、

 スピードを上げてくるんと簡単に、

 車を停めた。

 

 運転、上手いねえ。

 

 弟は、

 そうでもないよ、と照れたように言った。