新しい玩具

 私は新しいおもちゃでした。

 役に立てばそれも良い。若いだけで価値はある。

 

 最初、言った。

 君は特別。愛してる。

 

 男は見抜いていた。

 私は本当に愛が欲しくて堪らなかったことに。

 例え、それが男女の関係に発展しようと

 …親から得られなかった無償の愛を、

 強く強く、欲していたことに。

 

 だから、束縛するたびに言いました。

 愛してる。

 私は、嬉しくて、どんなことにも従いました。

 

 言われるがままに家事をしました。

 家族との縁も切りました。

 

 お茶。

 男の言葉に、

 紅茶ですか、コーヒーですか、ほうじ茶ですか?

 そう、尋ねて、

 砂糖は2杯、クリープは3杯と覚えて。

 

 言われた通りに動いていればいい。

 分かりました。

 

 お前は言われた通りにできなかった。土下座して謝れ。

 申し訳ありませんでした。

 お前の言葉は軽い。

 

 性の相手もしました。

 挿入されても、特に気持ちよくありませんでした。

 しかし、私は喘ぎ声を必死で出しました。

 気持ち良い振りをしました。

 

 捨てられたくなかったのです。

 家族も失くした今、この人がいないと生きていけない。

 

 何度も怒鳴られました。

 突き飛ばされました。

 

 それでも、男を愛していました。

 

 プラットホームの端に立たされて、

 落ちたらすぐに電車が来るから、死ぬ、と言われても、

 ただの冗談だと思いました。

 本当に怖かったのですが、

 そう言うことはできませんでした。

 

 私は段々、壊れて行きました。

 文字が書けなくなりました。

 口が利けなくなりました。

 

 男は私に言い含め、精神科へ連れて行きました。

 私には精神に持病がありました。

 その薬は飲まないように命じられていました。

 

 医師は私を入院させました。

 閉鎖病棟でした。

 

 男に言い含められたことは、

 男の情報は語らないこと、

 男にはお世話になったということ、でした。

 私は言われた通りにしました。

 

 壊れたおもちゃは捨てればいい。

 

 私は家族を失い、居場所を失い、

 地元の精神病院に転院すると、

 ひとり暮らしの準備をしました。

 

 男は今、きっと、

 新しいおもちゃを求めていることでしょう。

 ひょっとしたら、

 もう、手の中に収めているのかもしれません。

 

 愛してる。

 おもちゃに囁きながら…。