悪夢の追想

 喉が渇いた。からからだ。

 俺は起き出して、近くにあったジュースを飲み干した。

 

「なんでだよ…」

 

 横になる前にフラッシュバックを起こしていた。

 それで、気分が悪かったから横になったら、

 おかしなフラッシュバックを起こした。

 

 フラッシュバックではないのかもしれないが、

 鮮明な記憶だった。

 

 小学生の頃、同級生に蹴り飛ばされ、

 寒い、冷たい廊下に引っくり返った。

 衝撃も思い起こされた。

 本当に寒かった。冬の記憶だろう。

 

 俺は小学校は5年生から行っていない。

 夏休みから、一度も。

 

 だから、あの記憶は4年生の時のものだ。

 

 しかし、何故だ。

 俺のPTSDは7月…半年前の経験が原因のはずだ。

 

 廃人にしてやると脅され、

 恐怖で壊れて精神病院へ入院した俺。

 

 しかし、小学校の4年生なら11年も前の記憶だ。

 訳が分からない。

 

 俺にはトラウマが多いから、

 フラッシュバックも種類が豊富なのだろうか。

 

 母に溺愛され、

 一緒に死のうと車に乗せられそうになった。

 父親が強姦をした。

 そのあと自殺した。

 その頃知ったが、

 小5の担任には苛められていたらしい。

 記憶にはない。

 とある狂った男に奴隷のようにこき使われた。

 さっき書いたな。

 廃人にすると脅した男だ。

 

 俺?女だぜ。

 最低の男に処女を奪われたから、

 ちょっとおかしくなってるだけだから、

 一人称が俺なくらい、気にしないでくれ。

 

 PTSDだってわかるまでに5か月もかかった。

 俺が恐怖で貝のように口を閉ざしていたのと、

 統合失調症をもともと患っていたせいだ。

 

 カウンセリングで記憶の発露を話したことが、

 発覚の原因だった。

 

 カウンセラーは男だが、

 以前から、話を聞いてもらっていて信頼していた。

 

 だから、男の性器が俺の性器に入っている感触なんて、

 気色悪いことも話せた。

 悪夢を見て眠れないことも話した。

 悩み事を次々話した。止まらなかった。

 

 そして、次の週、主治医にPTSDを告げられた。

 

 悪夢の追想…追体験。

 

 嫌なことは昔から鮮明に思い出すが、

 どうしてなのだろうな。

 今、嫌なことを言われているようで、

 布団の中で震えていた。

 

 悪夢で一晩中眠れなかったことも多々ある。

 中学生の頃には問題なかった。

 不登校だったから、眠れなくてもよかった。

 

 高校の頃は困った挙げ句、

 統合失調症の母と一緒に精神科に行った。

 睡眠薬で、多少は楽になった。

 そのうちに、統合失調症の薬も処方された。

 それで、かなり楽になった。

 

 自殺を図って入院したり、

 高校を卒業したり、

 大学に入学したり、

 また、自殺を図ったり…。

 仕舞いには、あの男を好きになって地獄を見た。

 大学をやめた。

 

 俺の悪夢の追想は何なんだ?

 妄想か?フラッシュバックか?

 

 俺はいつからPTSDだった?

 

 もはや分かりはしない。

 俺に残されたのは、悪夢の追想だけ…。