ボクは女ではありません 戦闘機

 過去の殺人事件の記事のスクラップ。
 それがボクの宝物だ。

 猟奇的であればあるほどいい。
 残虐な小説も好きだ。

 だから過去には戦争の本を読み漁っていた。
 先生があの時戦争の話をしたのも、

 ボクの好みに合わせたのだろう。

 最近、ボクへの悪意が大きくなってきた。

 母は、進学するのかとボクを問い詰める。
 もちろん、答えないよ。
 答える意味がない。

 学校で委員長に言った。
 行きたい大学があるんだ。

 国公立の難関大。

 けれど、ボクの学力ならいけるだろう。

 委員長は言った。
 なんだ、私の志望校と同じだ。
 
 ボクのお気に入りの木陰のベンチ。
 ああ。

 どうしたの?

 先生に志望校を教えるって約束したんだよ。

 委員長は、
 鬼コーチって呼ばないんだ?
 と、訊いた。

 違和感でもあったの?
 ボクが訊くと、委員長は、

 君、剣道部ですらないじゃない。
 それに、そういうことは本人には、言わない。

 要領、か。
 ボクは呟いた。

 そう、要領よ。
 委員長は嘲笑うように言った。

 戦闘機が空を飛んだらさ、君はどうする?
 ボクの唐突な問いかけ。本当に、唐突だね。

 どうもしないよ。

 その答えは分かり切っていた。
 ボクは立ち上がり、職員室を目指した。
 振り返りもしなかった。

 からり。

 扉を開き、一瞬の間。職員室の空気が凍る。
 ボクは気にせず先生の所へ行くと、

 志望校、教えてあげる。
 あっさりと志望校を伝えた。

 先生は、
 お前はお前らしく、普通に勉強して、入試に備えるんだ。
 と、言った。

 面倒だよ。
 ボクが駄々を捏ねると、

 いい子だ。
 頭を撫でられた。

 ボクは、ある程度機嫌を直し、
 じゃあね。
 と、職員室を出た。

 家に帰ると、気の強い妹が、夕食を作っていた。
 ボクが学校で眠りこけて、帰りが遅れたことにも、

 何も言わない。
 干渉しない。

 妹の作ったハンバーグは薄味で美味しかった。
 全て食べると部屋に引きこもる。

 母が何事か言っていたが、聞きもしなかった。

 宿題を片づける。
 ボクは提出物を疎かにしたことはない。

 そのあとで太ももを、剃刀で切った。
 お風呂に入るときに沁みたけれど、気にはしないよ。

 いつものことさ。
 呟いて…。

 身体の傷痕を確認する。背中のものは鏡で見る。
 悪くない。

 さあ、世界に主張しよう。


 ボクは女ではありません。